ミキ日記

御木茂則のブログです。

『寝ても覚めても』(濱口竜介)

軽い気持ちで観た映画に打ちのめされた。エンターテイメント性と作家性を極めて高い次元で両立させている作品。

人によっては唐田えりか演じる朝子の行動を、ビッチとかカマトトぶりやがつてと批判するかもしれない。しかし私は普段は気持ちを抑制している朝子が、解き放たれたときの姿に爽快感すら感じた。同時に人がうちに秘めた気持ちの怖さも。

愛と恋の違い、愛の綺麗事だけではない表情を描いたこの映画『寝ても覚めても』は傑作です。この映画どんな終わり方をするんだよ、とハラハラドキドキしていたら、至上のラストカットで締めくくられました。

 

敬愛する牛腸茂雄の作品が、物語の中で大切な役割を果たしていることがとても嬉しかった。あと猫さん映画でもあります。終盤のある描写が感涙モノ。

 

そして大切なこと、東日本大震災から数年経った今の日本を俯瞰する形で、実に巧みに物語の組み込まれている。終盤、東出さんが一人二役を演じるうちの一人である麦が言う一言が、私には衝撃的でした。

東出さんの一人二役の演じ分けも拍手喝采です。

 

俳優さんが歩く走るなどの方向性の描き分け、歩み寄り方など様々な映画の技法が実に巧みに、映画を映像で語るために使われています。

本当に『寝ても覚めても』とんでもなく面白くすごい映画であり、濱口監督の真摯な姿勢が伝わってくる映画でした。

 

去年、唐田えりかさんとはこの映画の撮影が終わったあとに、仕事をしているのですが、とてもいい子でした。

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